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茶懐石 温石
独自に追求する技で輝く、
静岡を代表する鮮魚店の旬魚「金目のうろこ焼きです」
言葉とともに差し出される一皿。その美しさに、まず目を奪われる。飴色のウロコは油を纏って立ち上がり、身はふっくらと水分を湛えている。そしてウロコの間を網の目状に走り、身へと流れるタレ。炭と魚の距離を細やかに調整しながら、最高の焼き上がりになる一瞬の頂点を見極める。飾り気のない、直球の焼き魚がこれほどまでに美しいのは、そこに店主・杉山乃互(だいご)氏の並々ならぬ思いが込められているからだろう。
しかしこれほど見事な技術を秘めながら、杉山氏はあくまでも黒子に徹する。語られる言葉も、技術論や調理のこだわりよりも、地元焼津への誇りが中心だ。「僕に関していえば」そう前置きしたうえで、杉山氏は言う。
「料理人としての役割は、焼津の魚の良さを伝えること。つまり主役は料理人ではなく、素材なんです」
その主役とは、静岡を代表する鮮魚店であり、杉山氏が最も信頼を寄せる『サスエ前田魚店』前田尚毅氏の魚。ただ指定した魚を売るだけの店ではない。杉山氏が料理の内容を伝え、前田氏が実際にその料理を味わい、そこに適した魚を選ぶ。ただ脂がのっていれば、ただ新鮮なら良いわけではない。杉山氏の料理となったときに、もっとも輝く魚。
最高の魚が届くと信じる杉山氏と、自身の魚が最高の料理になると信じる前田氏。互いの信頼関係があるからこそ、【茶懐石 温石】は静岡を代表する店として名を轟かせているのだ。足を運ぶべき理由
杉山氏が先代の跡を継いでからの一番の変化は、個室だけだった店内にカウンターを設えたこと。これはパフォーマンスのためではなく、一秒でも早く、最高潮の状態でゲストに料理を味わってもらうため。駿河湾から届いた魚が、最短距離で口に届く。その簡潔なスタイルで静岡の美食を伝える。
静岡のトップレストラン
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Hitosara special
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Photographs by Jiro Otani , Mami Hashimoto /
Text by Shinji Yoshida , Natsuki Shigihara /
Design by form and craft Inc.
※営業時間、定休日などの情報は変更されることもございますので、あらかじめご了承ください。