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  3. 一流の系譜を継承するレストラン

東京のいまを熱くする 一流の系譜を継承する
レストラン
Hitosara special

哲学、技術、矜持、精神……。
一流のDNAが若き世代へと受け継がれ、新たな世界を切り開く。
いつの時代にもそうした新たな血潮がレストランシーンを面白くしてきた。
フレンチ、中華、イタリアン、薪焼き、串揚げ。
一流の系譜を継承する、東京レストランの最前線を紹介する。

Photographs by Takuya Suzuki , Jiro Otani , Shinjo Arai /
Text by Natsuki Shigihara , Koji Okano , Ayano Yoshida , Maria Kawashima , Ai Ozaki
Design by form and craft Inc.

  • 串揚げの名所である大阪・新世界で青春時代を過ごしたシェフの邉修和氏。
    カウンター越しに客と会話を楽しみながら串揚げを提供する料理人になることを、自然と夢見るようになっていた

    串揚げPyon 長谷川稔Lab

    大阪で修業を積んだシェフが魅せる
    クリエイティブな串揚げ

     【長谷川稔Lab】とは、予約数年待ちの名店として知られる【長谷川 稔】のシェフ、長谷川稔氏とコラボレーターたちによる美味、美食の創造の場であり、研究所。2020年9月にオープンしたばかりの【串揚げPyon 長谷川稔Lab】は、そんな一流の環境で、大阪出身のシェフ、邉修和(ぴょんのぶかず)氏が創作串揚げを披露する一軒だ。

    「長谷川シェフがこれまでに築いてきたネットワークを駆使し入手できる、最高の食材を使って串揚げというジャンルで勝負できるので、とても楽しい」と邉氏。「濃熟茸」という名前のかさが大きく肉厚なしいたけなど良質な野菜をはじめ、広島の特産品「子持ち蒟蒻」やアップルマンゴーといった珍しい食材を使う一方で、串揚げに糸削りにしたまぐろ節をまぶしたり、コース一本目で土佐赤牛のフィレ肉を供するなど、定番から変化球まで、18本の緩急自在コースは実に痛快だ。18本というとかなりの量に感じるものの、邉氏が独学で身につけた“油切”により余分な油が削ぎ落とされた串は、さっぱりとした食後感。ほとんどの客が、追加の串まで注文するという。

     邉氏が飲食店で働き始めたのは15歳のとき。串揚げの名所である大阪・新世界の近くの高校に通っていたため、自然と串揚げ店に通うようになり、気づけばそこで働くようになっていたそう。その後、北新地の創作串揚げの店などで経験を積むうちに、全国で食べ歩きをしていた長谷川氏と出会った。現在31歳。若くとも、すでに16年も料理人として串揚げで勝負をしている。そんな若き料理人の大胆かつ自由な発想と、イノベーティブな長谷川氏の経験とネットワーク。双方が掛け合わさり、串揚げはどんな形で進化していくのか。期待は高まるばかりだ。

    • 広島の特産品「子持ち蒟蒻」に糸削りのまぐろ節をまぶした串。蒟蒻にししゃもの卵が入った、ぷちぷちとした食感
    • 長谷川稔グループだから仕入れられる食材。牡蠣は燻製に、大根はだしで煮るなど、さまざまな下処理をする
    • 串は180~190℃で揚げ、鍋からあげる時にクルクルっとまわして油を切ってさっぱりと仕上げる
    継承する一流の系譜

    【長谷川稔】といえば、強烈なインパクトの料理が有名。その長谷川氏の考えで、【串揚げPyon】のコースで最初に提供する串は「土佐赤牛のフィレ」。「一般的にはエビなどさっぱりとした塩系の食材から始めるけど、ガツンとした旨みのある串を1本目にしてインパクトを出すのが狙い」だそう。

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