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京都のトップレストラン 名店の
ニュースタンダートを
追う
Hitosara special

外食産業が試行錯誤を繰り返し、新たなレストランのあり方を模索する昨今。
京都のトップを走る料理店、レストランは、いまどうなっているのか?
これからのニュースタンダードになるであろう、京都の5名店を追った。

Photographs by Toshihiko Takenaka , Kunihiro Fukumori , Shuhei Sakai /
Text by Natsuki Shigihara / Design by form and craft Inc.

  • 明治築の京町家に、わずか6席のカウンター。この贅沢な空間が、古田氏の料理をいっそう輝かせる

    二条城ふる田 にじょうじょうふるた

    力強い色彩と、繊細な味わい
    料理人の思いが描く独自の世界

     料理人が自らの技術と経験、そして信念を込めた飲食店には、その店独自の世界観がある。【二条城ふる田】で感じるのは、料理、空間、店主の存在感、酒と肴の塩梅、配膳の間などあらゆる要素が絡み合って生まれる、心躍るような世界観だ。明治末期の町家の引き戸を潜る。温かい土壁が迎える。6席だけのカウンターはゆったりとした配置。オープンなカウンター内に設えられた焼き場が、温かみある風情を醸す。店主の古田幸平氏は陽気で豪快な人柄。しかし包丁捌きは驚くほど繊細だ。店に入り、席に着き、料理が届くまでの間、すでにゲストはこの店の世界観に肩まで浸かるのだ。
     料理にも個性が光る。無数の花びらを散らした皿の上の躍動的な鮎。花穂紫蘇と手摘み海苔で覆い尽くされたお造り。食材、色彩を大胆につかいながら、皿の上には絵画のような美しい世界が描かれるのだ。その姿は、いわば印象派。料理を味わってみても、その印象は変わらず、それぞれの素材が明確に存在感を主張し、それでいてすべてが高い次元で融合する。肩肘張って緊張しながら食べるより、料理のパワーを正面から受け止めるように豪快に楽しみたくなる味だ。京都の料理屋、という言葉のイメージとは少し異なるかもしれない。しかしこの店には人を惹きつけてやまない明確な魅力がある。

    • 「すべての料理に全力投球。どれがメインと決められない」と古田氏。力強い料理に、繰り返し通うファンも多い
    • 酒は銘柄を固定せず、ゲストの反応を見ながら入れ替える。「自分もいろいろ飲めるでしょ?」と古田氏
    • 子持ち鮎の焼き物に、いちじくを添えて。水中で泳ぎ回るような躍動感あふれる盛りつけも印象的
    • コースでは締めの食事の前に季節の小鍋が出ることが多い。この日はすっぽんと松茸と白葱の鍋
    名店のニューノーマル

    席数削減、アクリル板設置、換気など、安心、安全への配慮は万全。それだけではなく、「こういう時代になって、食は一番の贅沢だと改めて気づいた」と、おいしいだけではなく、リラックスして楽しめる雰囲気づくりにもいっそう力を入れているという。

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