1. ヒトサラ
  2. ヒトサラSpecial
  3. 名店のニューノーマル

新しいレストランの形がここに! 名店のニューノーマル Hitosara special

外食のあり方が問われるなか、多くのレストランがいま、試行錯誤をしている。
どんな状況下でも、リスクを減らし、食べに来てくれる人をもてなし、
最高の料理で幸せを感じてもらおうとできる限りの対策を施し、営業をするレストランがある。
これからのレストランのスタンダードになるであろう、ニューノーマルな5つの名店を紹介する。

Photographs by Takuya Suzuki , Jiro Otani , Noriko Yoneyama , Shinjo Arai
Text by Natsuki Shigihara , Itaru Tashiro , Ayano Yoshida , Maria Kawashima
Design by form and craft Inc.

  • この日の「造り」は鱧とマグロ。鱧は串を打ち、皮目を炙った焼霜造り。塩水で食すれば、旨みの輪郭がクッキリと際立つ。
    マグロは脂乗りも抜群の中トロ。黄身醤油で食べさせることもあり、最高の美味しさを追求することに余念がない

    銀座・器楽亭 ぎんざ・きらくてい

    常に高みを目指してきた名店の矜持
    今日という日の最高の美味を調える

     「今日のマグロは、脂がしっかり乗っていますから、お醤油を添えるだけで、十分においしく召し上がって頂けます」
     【銀座・器楽亭】の店主・浅倉鼓太郎氏がずっと考えてきたのは、今、目の前にある食材といかに真剣に向き合い、どうしたらその日にしかできない最高の料理がつくれるかということ。久我山の住宅地での12年の実績を引っさげ、2020年3月、銀座へ移転リニューアルしたが、その姿勢にブレは全くない。
     旨みの強い鱧はいつものように「塩水(えんすい)」で。塩水とは、「塩のアクを引いてつくる」つけダレの一種で、本来は個々の魚の状態を見極めるため、料理人が味見用として秘かに用いてきたもの。しかし、浅倉氏は鱧のポテンシャルを最大限体感してもらうべく、あえて客人に振る舞っている。
     万事がこの調子なのだ。日本料理が育んできた知恵や技術を理解した上で、「自分ならどうするか」を考える。そうした強い意志がある一方で、固定概念にとらわれることなく唯一無二を生む卓抜したセンスもある。「シャトーブリアンのカツサンド」はそうした柔軟性の象徴で、京都で出会った牛カツの自分流を熟考し、試作を重ねて誕生した久我山時代から続くスペシャリテ。ほかにも「ノドグロの飯蒸」など、この食材を最高においしくする方法はほかにないのでは? と思わせる、オリジナル料理がいくつもある。
    銀座は、先付からデザートまで約12品を供す、その日のおまかせコース一本で勝負するが、どの料理にも取り合わせなどに新しい発見があって、食べれば胃の腑に心地良く収まるおいしさがあり、話を聞けば最高に仕上がる道理がある。
    「久我山から引き続き来て下さる常連の方も多く、本当にありがたく思っています」
     贔屓が付く店には必ず、理由がある。そう実感する名店だ。

    • カウンター越しに客人をもてなす、店主の浅倉鼓太郎氏。「完全独学」で道を極める料理人だが、腕は確かで、所作も見惚れるほど美しい
    • ほとばしる濃厚な脂と旨みをしっかり受け止めたご飯の味わいに思わず唸る「ノドグロの飯蒸」。葱と生姜を叩いた薬味がアクセント
    • 先付は涼やかに「スッポンとナスのすり流し」。中にそうめんが潜んでおり、ジュンサイの食感も楽しい。計算され尽くした一体感が見事
    名店のニューノーマル

    基本的には、17時半から18時ぐらいまでのスタートと、20時スタートの二部制で、要予約。カウンターも全席を埋めることなく、グループごとに間を空けることで密を回避しており、安心して独創的な料理を堪能することができる。予約は常に次月の末日分まで受付。貸切や時間外営業も臨機応変に対応してくれるため、事前に相談を。

Back to Top