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新たな時代を生き抜く店はここ! 東京、いま注目の
新レストラン
Hitosara special

元号が変わり、まもなく一年が経とうとしている。
その間、どれほど多くのレストランが産声をあげてきただろう。
グルメバブルともいわれる群雄割拠の時代を生き残り、
令和という時代で愛され続ける店はどこか。
注目のフレンチから鮨、フュージョンまで、いま注目すべき店を取材した。

Photographs by Takuya Suzuki , Noriko Yoneyama , Shinjo Arai / Text by Itaru Tashiro , Ai Ozaki , Maria Kawashima
Design by form and craft Inc.

  • 「一貫目はいつもマグロから握らせていただいています」と店主・中村龍次郎氏が言う通り、おまかせコースの冒頭を飾る中トロの握り。
    マグロは専門の仲卸【やま幸】から仕入れている。【鮨 龍次郎】の顔ともいえる端正な握りだ

    鮨 龍次郎 すし りゅうじろう

    師の姿勢を真っ直ぐ継承し、
    己の道を見極め、前進する

     「まずは一貫、握らせて下さい!」
     着席して間もなく供された先付の後で、親方の快活な声が響く。握りは中トロ。小ぶりなシャリは口の中でホロリと解れ、マグロの力強い旨みと一体になって広がっていく。そして、ゲストが相好を崩すのを見るや、親方はこう続けた。
     「今日は羽田沖で揚がったマグロです」
     挨拶代わりの一貫は【鮨 龍次郎】で、すでにおなじみの光景。厚さ10cmはある木曾檜のカウンターなど、白木が神々しく映る室内は堂々たる江戸前鮨店の設えだが、親方の立ち居振舞もあってか、漂う空気は温かく、優しい。
     親方の中村龍次郎氏は4年間、青山【海味】の暖簾を守ってきた人物。カリスマ性のあるキャラクターでゲストにも同業者にも慕われた鮨職人・長野充靖氏の薫陶を受けた愛弟子で、師亡き後も同店のミシュラン二ツ星を堅持してきた。
     「旨い鮨を握るのは当たり前」。その先にあるゲストの幸福まで追い求めるサービス精神も見事に継承し、2019年晩秋、ついに独立を果たした。
     おまかせコースは中トロの後、刺身や茶碗蒸し、焼物などが登場し、いよいよ待望の握りへ。しっかり仕事を施した11貫ほどがポンポンと小気味よく繰り出される。
    「シャリの酢は3種を合わせています。お米は最近、北海道の「ななつぼし」が主体のブレンド米に替えました。シャリのほぐれ方が気に入って」と、独立してなお、微調整は重ねている。
     室内は明るいオーラで満ちていて、食べれば親方の向上心に感銘を受け、気付けば、身も心も満たされている。群雄割拠の東京の鮨店にあって、この存在感はやはり希有だと実感する。

    • 2019年11月に独立を果たした中村龍次郎氏。学生時代から道を志した鮨職人で【海味】のほか、金沢や銀座でも修業経験あり
    • 鯛のお造り。刺身は鮮度を重視。その日の朝に締めたものを提供する。食べれば、コリコリとした食感でフレッシュさを実感
    • コハダは定番だが「良いモノが入れば握る」というスタンス。包丁目も美しい仕上がりで江戸前の仕事っぷりを重視

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