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ビストロ ピエロ ビストロ ピエロ
いただく命に真摯に向き合い
ゲストを笑顔へと導くひと皿に「素潜り漁もするし、最近では狩猟免許も取得したので、あとは野菜も栽培すれば完璧ですね」
そうはにかみながら笑うのは、【ビストロ ピエロ】のオーナーシェフ、髙野貞人氏。すべての食材が自給自足とはいかないが、それでも店で出す魚は、知り合いの漁師か髙野氏自身が獲ったものだけを使う。例えば、この日ポワレにして供された宮古島の高級魚として知られるトガリエビスは、数日前に髙野氏自ら獲ってきたもの。鮮度が落ちたから火入れするのでなく、数日間寝かせて旨みを増幅させ、あえてのポワレ。それを可能にするのが、髙野氏の神業ともいうべき仕事だろう。
「サンゴの下に隠れていることが多いトガリエビスは、人の気配を感じてそっと顔を覗かせることがある。その一瞬を狙い、水中銃でこめかみを一突きするんです」
素潜り漁では、30メートル近くの深さまで潜ることもあるが、余裕がある時は水面に浮上してくるまでの2〜3分の間に、血抜きと神経締めの下処理まで済ませるというから驚きだ。南の魚ながら、寝かせて旨くなるわけである。
一事が万事、【ビストロ ピエロ】ではそうした食材が料理となる。それらがおまかせ感覚で供されるのも、この店が愛される理由だろう。「今日は魚と野菜の気分」「ワインとおつまみくらいで」といった具合に、ざっくばらんなリクエストに、髙野氏は最大限の誠意で応えていく。
そんなゲスト本位なホスピタリティ精神にはちょっとしたエピソードがある。それは髙野氏の調理師専門学校に通っていたときの話。授業の講師を担当していたのが、【Grand Bleu Gamin】の木下威征氏だった。髙野氏はその指導に感銘を受け、働き口を相談。その紹介先が、料理人人生の幕開けとなった。やがて、着々とキャリアを重ねた髙野氏は宮古島へ。店のオープン時に木下氏から贈られたのは、こんな言葉だった。「ピエロであれ」。ゲストを喜ばせることを最も重んじる木下氏の矜持が込められた一言だ。
胸に光る数々のピエロのバッジは、毎年周年祝いに常連客から贈られたもの。命をいただく食材、接するすべての人に誠実に向き合う髙野氏の料理は、今日も島の誰かを笑顔にしている。
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