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  冬の札幌、
旅の主役になる
レストランへ
Hitosara special

言わずと知れた食材の宝庫・北海道。
「食材頼みで職人が育たない」などと言われたのは昔の話。
今札幌では、力強い北の食材を繊細な技で光らせる
素晴らしい料理人が腕を振るっている。
食材×技術。その両輪がピタリとはまった5名店。
いざ、美味を味わうために冬の札幌へ!

Photographs by Atsushi Tanabe / Text by Natsuki Shigihara
Design by form and craft Inc.

  • 現在でも週に2~3回は山に入るという高尾シェフ。
    唯一無二の料理は、古と現代、そして未来の北海道料理の架け橋

    TAKAO タカオ

    アイヌ民族の知恵と独創性が生む
    唯一無二の北海道イタリアン

     調理専門学校を卒業し、21歳の若さでフランスに渡った高尾僚将氏。「若くして本場を知り、生意気になっていた」と振り返る通り、帰国後に働いたいくつかの店では喧嘩別れになってしまったこともあった。そんな折、札幌にできたイタリアンの名店【ラ・コリネッタ(現ヴィネリアオザワ)】を訪れ、ポルチーニのリゾットを食べて衝撃を受ける。
     「シンプルに北海道の食材を活かすイタリアンこそ、自分に合っている」
     そう感じた高尾氏は、翌日にすぐ手紙を書いて、同店へ熱意を伝えた――。映画のようなストーリーは続く。その後、東京や上海を経て、支笏湖の畔にある「翠明閣」のレストランを任されることになった高尾氏。そこで食材を求めて毎日山に入るうちに、アイヌの方と知り合いになる。それが現在へと続く岐路となった。
     現在、高尾氏が追求するのは、イタリアンの枠を越えた“新北海道料理”。そのベースとなるのは、先住民族であるアイヌの知恵だ。オオユウバリのデンプン、コブシの木、熊笹……。多用するのは、一般的には食べられることさえ知られていない食材の数々。それらが熟練の技により、唯一無二の料理へと昇華されるのだ。好奇心もあるだろう。自身が住む土地の先住民族の料理を遺し伝えるという責任感もあるだろう。しかしその志を支える一番のモチベーションはおそらく、それが純粋においしいという料理人としての本能だろう。
     文化的背景のある料理は、世界中のフーディを喜ばせる。未知なる山の食材はサスティナブルの観点からも意義がある。しかし、それ以上に、ここでしか味わえず、誰が食べてもおいしいこと。その事実こそが、北海道の食の新たな魅力として人々を誘引するのだ。

    • ずらりと並ぶ調味料や発酵食品は、どれも見慣れぬものばかり。これが【TAKAO】だけの料理を生む
    • 一杯で30個のマッシュルームを使う『山のエキス2019』。白樺の皮のブロードやツツジのエキスも使用
    • ワインリストには今や日本ワインの代表格となる道産ワインも並ぶ

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