今の時代の『シズル感』というものが、単にツヤや湯気のことを言うだけではないということを、おしえてくれる写真だと思う。飲食店の撮影で、その店のメインビジュアルとなるものを選び出すことは至難の技だろう。ともすれば、撮影者の自己満足のような一枚を生み出してしまうケースもあると思う。そんな難しさの中、佐藤さんの素直でこざかしさのない表現は好感がもてる。料理人の視線、お客様の視線、それを繋ぐことができるのは、まさに写真の力。この店のカウンター席に座ってみたいと感じたのは、撮影者の力だと思う。
HITOSARA OISHII PHOTO AWARD
- GRAND PRIZE -
串焼き
佐藤 顕子グランプリ総評
一人でカウンターに腰かけて一杯のビールと焼き鳥を頬張る姿が想像できる臨場感のある写真です。カメラマンはライティングで煙も焼き鳥もはっきり映すのが普通ですが、本作品は、店の雰囲気を感じれるように定常光で撮影しています。当たり前でない写真を撮る姿勢と発想力に大変驚かされました。
審査員コメント
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予断をもたずに撮れていることが素晴らしいと思います。美しさにとらわれがちな料理写真の落とし穴を上手にかわして「いつどこで誰と食べるかでおいしさは違うでしょ、そんなの当たり前じゃない」というてらいのなさ。今回のエントリー作品の中では異色で、料理写真のフォーマットを超えておいしさが表現されています。プロの撮影現場においてこうした撮り方は案外勇気がいるもので、同じ料理を撮るフォトグラファーとしてその感性と気概に一票です。
受賞者インタビュー
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今回の受賞した作品についてどうおもわれますか?
「そのままのカタチを表現したい」と感じ、照明などのアイテムを使用せずリアルさを大切にした写真です。カウンター席から見える風景、そしてお客様がカウンターに座ったときと同じ目線で撮影しました。店を訪れた人がカウンターで同じ景色を見たときに、ふとこの1枚を思い出してくれたら嬉しいです。
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ヒトサラの撮影は佐藤さんにとってどのようなものですか?
常に新しい出会いや刺激を与えてくれる、自分にとって大切にしたい居場所です。店舗ごとに異なる料理、空間、人。それぞれにストーリーがあり、一つひとつの小さなこだわりも、ヒトサラの撮影だからこそ知り得ること。これまで出会ったさまざまな店舗様とのつながりを大切に、さらなる出会いを求めていきたいと思います。
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佐藤さんが目指す写真についてお聞かせください。
第一印象を大切に、自分が感じたままにシャッターを押し、人物においては、さりげない会話から見える人柄や魅力を写真に収めるよう心がけています。限られた撮影時間の中で、ベストな料理を仕上げてくれる料理人。料理に懸ける想いを写真に収めることができたとき、それが私の目指す写真です。
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今後の抱負をお聞かせください。
料理には「キメ顔」があると思います。五感を刺激する、1ミリのズレも許されない料理の顔。料理をはじめ、店舗様の「キメ顔」を素早くキャッチして、心に残るベストショットをお届けできるよう努めてまいります。
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この度はおめでとうございます。