寿司が職人の手から離れ、シャリがゆっくり呼吸をする様を見事に捉えている。寿司は握られたタイミングが食べ頃で、その瞬間のために、米を炊き、酢を混ぜ、おひつで休ませ、シャリに成る。その仕事に写真で応えるためには、誰かが撮ったような写真を真似しても仕方ない。自分のルーティンをも乗り越える覚悟が必要だと思う。握られた寿司は生きものである。料理はすべて生きものだ。少ない機会を大切にしながら少しでも良い表現をしようと試行錯誤する、レベルの高いフォトグラファーの意志を感じた。この店に行ってみたい。
HITOSARA OISHII PHOTO AWARD
- FIRST PRIZE -
カマトロ 握り
志賀 真人準グランプリ総評
『一流店にも負けない寿司を握る』という店主の思いまでを表現している写真です。黒の塗皿で撮影することで、反射具合がとても美しく力強さを感じました。この寿司店がこだわった食材とシャリを伝える為に、構図・ライティングを丁寧にしている姿が想像できました。一般投票で多くの票を獲得したのも納得です。
審査員コメント
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心地よい緊張感。「一貫」を撮影した「一枚」で他に語る必要が無いように感じるのは凄いことだと思います。寿司店の粋にフォトグラファーがきちんと向き合っているのが見てとれます。ネタだけではなくシャリの質感までも見事に写していることで、カマトロの握りが口の中でほろりとほどけて鼻に抜けていく様が寿司好きの脳裏に描き出されそうです。背景の黒の処理の他、色温度やコントラスト等、フィニッシュワークの細部に至るまで丁寧になされていることにも好感がもてました。写真のクオリティでは群を抜く作品と思います。
受賞者インタビュー
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今回の受賞した作品についてどうおもわれますか?
「東京の一流店にも負けない味わいと、愉しさのあるお寿司を」という、店主の料理への熱い思いがこの握りひとつにも溢れていたので、その美味しさをそのままに伝えられるように心を込めて撮影しました。黒い背景素材をチョイスしたことで、香り立つような味わいや高級感を醸し出す一枚になったと思っています。
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ヒトサラの撮影は志賀さんにとってどのようなものですか?
シェフや職人たちと一対一で向き合える場です。そのひたむきで真摯な姿勢にいつも刺激を受けています。皆さんと一緒に仕事を進めていく作業は、自分にとって、とてもいい経験を積ませていただける場。ヒトサラの撮影と共に自身の成長もあったと感謝しております。
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志賀さんが目指す写真についてお聞かせください。
お店の魅力をストレートに表現できるような写真を撮り続けたいと考えています。
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今後の抱負をお聞かせください。
現在、豊かな食文化をもつ金沢に在住し、「食の宝庫・北陸」の魅力を県内外に向けて発信する使命感も胸に活動しています。北陸の魅力を、さらに多くの人に知ってもらえるように撮影を続けていきたいです。
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この度はおめでとうございます。