まるでリゾート地の森の中。別荘のような一軒家レストラン

 溜池山王のほど近く、外資系のビルが居並ぶエリアに、忽然と緑豊かなリゾート地を思わせる一角がある。その中に、DEAN & DELUCAの最高峰レストランである【アーティザンテーブル】はある。都会にいながらにして、旬を感じ、素材の力を生かした料理を旨とするDEAN & DELUCAのスピリットにはぴったりの立地と言えそうだ。
【アーティザンテーブル】のメニューを監修するのも境シェフの仕事のうちだ。今回のミッションは「Ome Farm」の野菜を使った特別メニューを考案すること。

溜池山王駅から徒歩5分ほど。表通りからちょっと奥に入ったところに贅沢な2階建てのレストランがある

 農家も、漁師も、酪農家も、料理人も、食の作り手はみなARTISAN(手作業で何かを生み出す職人)という考え方から、食の職人と職人がつながって生まれる料理を通して、人とつながり、その素晴らしさをすべての人へ伝えるのが、ここ【アーティザンテーブル】の目指すところ。だから料理は、顔の見える生産者の作る素材の力がストレートに伝わる、シンプルかつエレガントな品々ばかり。

段ボールいっぱいに詰まった、採れたての野菜たち

 境シェフが「Ome Farm」から届いた段ボールを胸弾ませながらあけると、さまざまな野菜の形、色、香りに、畑での感動がよみがえる。畑でのびのびと育っていた野菜たちがしばらくの間、窮屈な思いをしていたに違いないと、すぐに、新聞紙やビニールから取り出して、冷水に放してやる。すると、畑で育った環境を思い出しているかのうように、水分を吸い込んでいく。さて、この元気な野菜たちで何を作ろうかと、境シェフの頭の中で楽しい構想が広がる。

アーティザンテーブル×Ome Farm 珠玉の一皿ができるまで

2階の中央にあるオープンキッチンで料理を仕上げる境シェフ。木目の大きなテーブルは、店内の主役だ。料理をする躍動感が伝わるのが何よりの楽しみ

 ”食べることは、人生を味わうこと”という、DEAN & DELUCAの哲学を軸に、境シェフは今年で10年、DEAN & DELUCAの料理を支えてきた。料理名や見た目といったファーストアプローチから、本当に身体が喜ぶ食材でおいしいものをつくるという本質的なところまで、こだわりは細部にまで渡る。「彼は、フレンチの技法をベースに中東のスパイスを巧みに扱うなど、常に新しい技と知識を身につけ、新しい風を吹き込んでくれました。料理に対して常にまっすぐ向き合っています。」と、お客様のみならず、同僚からも厚く信頼されている。

(左)届いたばかりのコリアンダーやルッコラを次々水に放す(中)色鮮やかな紫の葉玉ねぎをマリネするためにスライス。(右)栗のはちみつは調味の重要なアクセントに

 境シェフが食材を見てメニューを考案するまでに、あまり時間はかからなかった。なぜなら素材に力があるから、こんな料理を作りたいというアイディアがすぐに浮かんでくるのだ。今回は、DEAN & DELUCAで展開している、レストラン、デリ、カフェの3つの異なる業態で、「Ome Farm」の野菜を使ったメニューを考えてもらった。食べるオケージョンも用途も価格も異なるため、それぞれのニーズを満たし、喜んでもらえる料理を考えなければならないというハードルは高い。
 そんな中、境シェフがたくさんの野菜たちから厳選したのは、フレッシュコリアンダー、ルッコラ 、ハチミツ、ビーツ、コリアンダーの花、赤玉ねぎ。そのどれもが、強烈な印象を境シェフに残したものばかりだ。

畑で感じた野菜たちのパワーを一皿の中に表現

香ばしく焦げめをつけて焼いた、豆乳パンにバターをのせ、溶けかけたところに、はちみつをとろり

 さて、まず、「カフェ」のメニューにと考えたのは、オリジナルの豆乳パンのバタートーストにピュアな蜂蜜を添えた『ハニートースト』。これまで、バタートーストというメニューはあったけれど、はちみつ添えるは初の試み。
「Ome Farmで試食させてもらった蜂蜜の鮮烈で上品な甘さが忘れられず、今回のプロジェクトにぜひ蜂蜜を取り入れたいと思ったのですが、あのピュアな甘さは、調味料として使うよりも、もっとダイレクトにシンプルに生かすほうがよいと思ったんです。いろいろ考えた末に、ごくシンプルにバタートーストにたっぷり添えるという結論に達しました」と境シェフ。バターのコクと塩味にほろ苦みと甘みが混じった栗の蜂蜜は、極上の大人のトーストになった。

ルッコラとコリアンダーを塩、オリーブオイル、ビネガーでトスし、タジャスカ産の小粒の黒オリーブと焼き目をつけたオレンジを散らして

 続いては、「プリペアードフード」と呼ばれる、各店舗にいるシェフによって、丹精込めて作られた、デリで販売するメニュー。たっぷりのルッコラと焼きオレンジ、タジャスカオリーブを使ったサラダだ。「Ome Farm」の野菜全般に言えることだが、味がとてもしっかりしている。なかでもルッコラは、通常販売されている葉野菜に比べて格段に味が濃い。畑でその苦みを受け止めた瞬間に、デリのサラダに使いたいと思ったそうだ。夏のスペインのイメージを思い浮かべて、焼きオレンジと黒オリーブを合わせたという。「そのままサラダとして食べてもおいしいのですが、肉や魚のグリルの付け合わせにも最高です。冷えた白ワインを合わせれば、それだけで夏のご馳走になりますよ」と境シェフ。ルッコラ、オレンジ、黒オリーブのほろ苦さが絶妙なバランスを醸し出す大人のサラダだ。

(左)ビネガーでピンク色に染まった赤玉ねぎを花のように見立てた盛り付けが、なんとも美しい(右)『ハニーピスコサワー』上にはコリアンダーの花を散らして

 「レストラン」での前菜として考案したのは、コリアンダーの花を主役にした魚のセビーチェ。「太田さんの畑では、どの野菜にもそのみずみずしさと力強さに驚きましたが、なかでも最も印象的だったのが、コリアンダーの花と葉赤玉ねぎ。その二つを組み合わせた料理を考えたとき、夏の時期に体が欲する酸味を加えて・・・と自然にこれはセビーチェしかないなと確信しました」と境シェフは言う。ライムのさっぱりとした酸味が、湿度の高い日本の夏にもぴったりだ。
 単品でいただくのはもちろん、「ぜひセビーチェとペアリングしてほしい」と考案してくれたのは、『ハニーピスコサワー』。ペルーの蒸留酒「ピスコ」をつかったカクテルだ。はちみつを加えたほのかな甘みが、セビーチェの酸味と抜群の相性を見せる。

木を生かした自然との共存を意識したインテリアに心和む

 窓の外に緑が広がり、開放的な気分にさせる店内で食べれば、しばし、都会の喧騒を忘れられそうだ。「Ome Farm」とDEAN & DELUCAは、自然の中の洗練、都会の中の自然と、その魅力が反転しながらも、同一の価値観の上にあることがよくわかる。これはまた、太田さんがNYに暮らしながら、NYの田舎ぐらしに最も魅力を感じたことなどにすべて相通ずる価値観なのかもしれない。都会の森【アーティザンテーブル】で、ぜひ心身をリフレッシュしてほしい。

DEAN & DELUCA特別メニュー販売決定

掲載のメニューが、DEAN & DELUCAの指定店舗でお召し上がりいただけます。

【レストラン・ディナー】
■本日の鮮魚とフレッシュコリアンダーフラワーのセビーチェ
■ ハニーピスコサワー
販売店舗:THE ARTISAN TABLE・DEAN & DELUCA
販売期間:6/14から6/30まで

【マーケット・デリ】
■フレッシュコリアンダーとグリルドオレンジのルッコラサラダ
販売店舗:六本木店、品川店
販売期間:7/2~7/15まで

【カフェ・モーニング】
■ハニートースト
販売店舗:青山店、麻布十番店
販売期間:7/2~7/15まで
モーニング:オープン~11:00まで

THE ARTISAN TABLE・DEAN & DELUCA

THE ARTISAN TABLE・DEAN & DELUCA

住所 東京都港区赤坂1丁目8−1 赤坂インターシティAIR1階
電話 03-4578-5882
営業時間 11:30 - 15:00(L.O.14:00) 17:30 - 24:00(L.O.Food 22:30 / Drink 23:00)
土日祝のみ15:00~17:00オープン、22:30クローズ(L.O.21:00)
休日 無休(※日曜日は2Fのコース料理をお休みさせて頂きます)
Ome Farm

Ome Farm

住所 東京都 青梅市 4-2873
電話 080-9540-4220

<お知らせ>
6/30のFarmers marketにて、Ome Farmの太田さんがトークイベントに登壇。世代問わず”食”について一緒に考えてみませんか?

写真/岡本 裕介 文/小松 宏子

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