本場の味は変えずに、“ハズシ”を効かせたハワイ流イタリアン
「やっぱり、こっちの人はみんなエビとかパスタとかが好きなんですよ」
そう言って笑うのは【Taormina Sicilian Cuisine】のシェフ・三村浩之氏。それがこの店で8年シェフを務めてなお変わらぬハワイへのイメージだ。しかし、三村氏は自身の料理を現地の味に合わせようとはしない。
「自分がやりたいのは、その料理の歴史が感じられる料理。だから、味は本場と変えません。そこを絶対に外さず、カットの仕方、盛り付けの有り様で地元の人にも受け入れてもらえる料理を心がけます」
だからこそ、シェフが大切にするのは、4年間のイタリア修業時代で習得したという塩の当て方である。この日登場した、スミイカをシンプルにグリルした『セッピア アッラ シチリアーナ』も、手長エビやホタテ、タコ、エビなどを炭火で焼いた『ペッシ ミスティ』も、味の決め手は塩。その加減ひとつで料理の印象はガラリと変わるという。「味が決まっていないとか、味がボヤけていると思ったら、結局は塩の加減が間違っているんです」
その三村氏が惚れ込むのがハワイのコナシーソルトだ。「自分は、トップクオリティでなければローカルの食材にもこだわりません。イカやタコはスペイン産、牛肉もメインアイランドから仕入れる。ただ、コナシーソルトはミネラルが豊富だし、甘みがあって本当に美味しい。味付けというだけでなく、味わいの輪郭もくっきりする」
ハワイのカラーを取り込みつつも、本場の味に着地する。ホノルルの人気店にハワイのイタリアンの未来がある。